ヨシナシゴトの捌け口

独り言の欠片をひたすら拾う。繋ぎ合わせもしない。

Entries from 2018-01-01 to 1 year

デイ・ゼロ

21歳の誕生日プレゼントは、命だった。 ギフト、と呼ぶ方が正しいかもしれない。特別な、そして特殊な贈り物だ。値札や包装はない。無論どんな店に並ぶこともない。 プライスレスな「赤いギフト」。 僕はギフトの贈り主を知らない。知ることは出来ない。顔も…

espressivo

過去というものは水底に沈んだガラス玉だ。光を浴びて表情を変え、時の流れに合わせてゆらゆらと漂う。手の決して届かぬところで、それでも確かに存在している。少しずつ色褪せていくが、探せばいつも変わることなくそこにある。水が濁れば浅い部分しか見え…

銀河鉄道の朝

初めて新幹線に乗った日を、今でも鮮明に覚えている。3歳の僕にとって新幹線は「夢の超特急」で、本当にどこまでも行けるんだと思った。東京駅で写真を撮っていると車掌さんが来て、非売品の定規をくれた。今でも机の引き出しの一番手前に入っている。あれか…

その日

僕達は皆、「その日」に向かって生きている。 どんな生き方をしたって、どんなに幸福であったって、「その日」はやがて訪れる。いつでも、誰にでも。終わりと、別れの日。 もう何をしたって、どんなに叫んだって、届かない場所へと旅立つ日。 関東ではもう梅…

スターライト

人間の内部には、多かれ少なかれ空洞がある。それは脳のあたりかもしれないし、肺や心臓のあたりかもしれない。このことを知ったのは18の時分だった。とにかくそれは誰にも彼にも存在しているのだ、と。ところが空洞には、とりわけ頑丈な蓋が施されていて、…